相模原市議会 環境経済委員会 行政視察
10月25日〜26日、相模原市議会環境経済委員会の委員9名で秋田県能代市に行政視察を行った。
視察項目は、以下の通り。
1 木材を多用した学校施設整備について
2 森林バイオマス活用施設整備
3 銀河連邦を通じた商業振興について
視察の概要
10月25日 午後1時より、能代市役所二ツ井町庁舎 会議室1に於いて、能代市議会事務局長より歓迎の挨拶を頂いた。
能代市は、米代川の流域及び日本海の河口を市域とし、平成18年3月21日に二ツ井町と合併し、人口55,000人余の新能代市として施政を拡大した。歴史的にも秋田杉を産出する林業と木材産業を中心に発展してきたが、近年は木材産業に衰退が見られ減少傾向にあることから、現在「木都」としてシティセールスを展開している。
能代市は、日本海に面し強風による飛砂対策として、南北総延長14㎞に及ぶ黒松を江戸時代から植栽し、約700万本の黒松の林は「風の松原」として景勝地ともなっている。
木材産業の他、日本海からの強風を利用した風力発電にも力を入れ、風力発電機47基が稼働している。また、バイオマス発電も60kw/hが2基稼働中で、現在3基目を準備中。
また、二ツ井町域には土壌改良材として需要の高い、良質のゼオライト鉱山があり、採掘されている。
この他、事務局長より能代市の歴史や近年の市政の状況を説明頂いた。
その後、大崎委員長より謝辞の後、視察に移った。
視察の概要は以下の通り。
10月25日
1 木材を多用した学校施設整備について
(二ツ井町庁舎 会議室でヒアリングの後、二ツ井小学校を視察)
(1)能代市の市立小中学校の木材を多用した木造校舎の状況
小学校で12校中6校(木造化率50%)、中学校で7校中2校(木造化率29%)。
(2)木造校舎の状況
平成7年3月に完成した崇徳小学校校舎(木造一部鉄骨造2階建)をはじめ、平成22年3月に完成した二ツ井小学校校舎・体育館まで、小学校6校と中学校2校について校舎及び体育館の木造化を行った。
(3)木造校舎建設の経緯について
歴史的に秋田杉の集散地で製材等が主力産業であったことから現在進めている「木都」にも合致すること、また、木のぬくもりと安らぎある快適な環境を整備創造しようとの観点から、可能な限りの木造・木質化を図った。
(4)地場産材使用のシステムについて
能代市木材産業連合会や建設業者、木材高度加工研究所と能代市などの産学官による大型木材建築物建設に関わる課題の検証を行ってきた。
木造大型施設の建設にあたっては、補助金・交付金活用を行ったが、資材と建設の分離発注ができないことから、工事発注の最低1年前から必要となる木材量等の事前公開を行った。
また、資材調達は請負業者の裁量となるが、理解をいただいて木材産業連合会を通じた木材調達を行った。さらに、品質についても共通理解と格差是正のため関係者の確認作業を行った。
(5)今後の維持管理について
木造校舎の改修については、建設後15年経過を目安に実施を考えている。
文部科学省所管の「学校環境改善交付金」、「義務教育施設整備事業債(大規模改造事業)」を活用。
現在策定中の「公共施設等総合管理計画」において、計画的な維持管理や長寿命化を図っていく。
[質疑]
◯ 鉄筋コンクリート造と木造のコスト面の違いは?
A 当初は木造のコストが割高となったが、検証を行いながらコストの削減を行ってきた結果、大きく遜色のない程度となった。
EX. 崇徳小学校 建設単価 307,000/m2(平成7年完成)
浅内小学校 建設単価 195,000/m2(平成18年完成)
*今回視察の二ツ井小学校は、建設単価 200,000余/m2
◯ 体育館の床については強度面等どうか?
A 体育館の床は強度面が課題となることから、地元にあるスポーツ施設向け建設資材会社のものを採用した。
◯ 耐震化についてはどうか?
A 木造校舎の建設を始めた平成7年は既に新耐震基準での設計施工となった。
◯ 木造の強度や耐久性についてはどうか?
A 設計上強度を必要とされる箇所には、樹種の選定と共に、集成材の利用など、適材の使用により強度を満足している。
A 鉄筋コンクリート造では、45〜50年、木造では20年と言われているが、市内の旧木造校舎では70年を経過しているものもある。15年を目安に修繕を行うこととしていることから、50年程度の耐用年数を考える。
*その他、多くの質疑あり。
*二ツ井小学校へ移動、見学。
*能代木質バイオマス発電所へ移動。
2 森林バイオマス活用施設整備
(能代森林資源利用協同組合管理棟事務所にて説明を受ける)担当:林業振興課職員等
(1)施設導入までの経緯
近年の経済的不振や競争激化に加え、天然秋田杉資源の減少などから、木材関連事業の低迷が続いてきた。公害としてダイオキシン対策が求められる中、平成12年の廃掃法の改正により、木材端材などの処理に従来の焼却処理が事実上できなくなり、ダイオキシン類対策特措法に合った焼却炉への措置が必要となった。個々の企業での対応では、経費面を含め経営基盤にも関わることから、協同組合方式による対応が模索された。
米代川流域林業活性化協議会の分科会で、木材端材等の発生状況を木材関連約300社にアンケートを依頼し、約100社の回答から状況を把握し基礎資料をまとめた。利用や焼却できないスギ樹皮・製材端材などは54,360tと推計。これらの利用方法として、バイオマス発電用の燃料化と一部木質ボードの原料化をめざす事となった。
平成13年5月31日に「能代森林資源利用協同組合」が、資本金31,000千円、組合員6名で設立された。事業計画内容は、木質バイオマス発電施設・木質燃料製造施設・管理棟運営。利用計画は、木質資源の循環利用を図るため、組合員等から排出される樹皮・製材端材等を粉砕加工し、木質ボード原料及びバイオマス発電による電気・蒸気の生産を行う。
[質疑]
◯ 事業の成果は?
A 1 木材及び木材加工から排出される端材等の有効利用ができた。
2 組合形式の事業化により、各企業体の負担が減少した。
3 松くい虫対策にも繋がった。
4 地元の雇用創出に繋がった。 等々
◯ 蒸気などの販売単価が下落しているようだが、事業の採算性の状況は?
A 現在の収支は、250,000千円で均衡している。利益を追求している事業ではない。
◯ 施設修繕費等は、事業費の採算から捻出しているのか?
A 小さなものは捻出しているが、平成13年の事業開始から15年が経過する時期となり、施設のメンテナンス等への取り組みが今後の課題となっている。
◯ 焼却灰の処理はどうしているのか?
A 秋田県の最終処分場へ搬入処理している。 等々
*施設の見学を実施。
10月26日
午前8時30分 能代市のバスで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)能代ロケット実験場へ移動。
3 銀河連邦を通じた商業振興について
(1)研究管理棟にて宇宙航空研究開発機構(JAXA)の概要説明及び能代ロケット実験場についての施設及び実験棟の実施状況の説明。
1962年に開設された能代ロケット実験場は、Mロケット用固体ロケットモータ技術の開発発展を支えてきた。2006年にM-V型ロケットの運用が完了したことから、現在は先進的な固体ロケット技術の研究開発拠点として活用されている。
高い燃費性能と低公害ということから液体水素を燃料とするエンジンが注目され、用途の広がりが期待されている。能代ロケット実験場では、1975年から液体水素をロケットエンジンやジェットエンジンの推進剤に用いた開発を行ってきた。極超音速ターボジェットエンジン(ATRエンジン)の研究開発を1988年にスタートし、現在は、エンジンシステムの総合燃焼実験を終え、飛行実験機(BOV)を結合したシステムの機能確認作業を進めている。
また、コストの高いロケットの効率的な運用を図るため、打ち上げコストを桁違いに下げる可能性が高い輸送機の完全再使用化に向け、1998年から研究開発を進めている。このため小型の垂直離着陸機を製作して実験を継続している。液体酸素(LOX)液体水素(LH2)ロケットエンジンは負荷が小さく最も高い推進性能を誇る。クリーンなエネルギー源としての水素の一般社会での利用のための基礎研究にも取り組んでいる。
能代ロケット実験場は、宇宙科学研究所が推進している大学との共同研究の場としても活用されている。2009年からは、京都大学とJAXAによる液体水素の試験が開始された。今後も多数の共同研究が計画されている。
施設には、「はやぶさ」が注目されたことから、その効果として見学者が増えている。最近は観光ポイントとして立ち寄る観光バスなどもあり、急遽、相模原のJAXAから展示用に機材を搬送して、小規模だが展示コーナーを設けた。案内などの対応は、研究作業に支障がない範囲で対応している。見学料は無料。
*質疑の後、施設の見学を実施。
*帰途には、国登録有形文化財で、天然秋田杉の殿堂と称される「能代市 旧料亭 金勇(かねゆう)」を見学し、天然秋田杉と建築加工の優を実感した。
*午後7時相模原帰着
投稿日:2016年10月30日